不動産AM(アセットマネジメント)会社とは、端的に言うと、投資家の代わりにプロとして管理・運用を代行する会社です。仕事としては「不動産金融」のカテゴリーになります。
投資家の業務を代行する立場にありますので、不動産オーナーが行うことは全てアセットマネジャーの業務範囲となります。
投資家の目線に合った物件を探してきて、鑑定会社から良い評価を取得して、より良い条件で借り入れられるように銀行と交渉し、不動産証券化の知識を持って契約書を作り、弁護士や会計士をうまく使って、どうにかこうにか物件を購入します。
そして、物件購入後も、投資家からの厳しい要求に応えながら、PM会社を叱咤激励し、又あるときにはおだてて動かし、ときには自分で募集のチラシを配りに行って稼働率や賃料を引き上げて、高値で売却してフィーをたくさんもらう、それが不動産AM会社です。
自分で資本を出さずに上前をはねていくために、とにかく必死で投資家に儲けさせる仕事です。
不動産AM会社における仕事を取得から売却までの業務をざっくりと分けると以下の3つに分けられます。
1.アクイジション(物件取得)
2.期中管理(保有中の運営・管理、狭義のアセットマネジメント)
3.ディスポジション(物件売却)
これに加えて、資金調達、IR、総務、経理といった業務があります。
このうち、1の取得と3の売却は仲介業者にも協力してもらいます。
また、2の建物運営・管理についてはPM会社やBM会社、リーシングは仲介会社にも委託します。
協力会社との円滑なコミュニケーションは無くてはならないものです。
そして、おまけのように書きましたが会社が倒産するのは借金を返せなくなったときだけとはよく言ったもので、AMでもまさに資金調達が要です。PO(Public Offering)や投資法人債の発行、銀行等からの借入れによる資金管理がなくてはREITは運営できません。また、REITの経理がしっかりしていないと分配金の予想もまともにできなくなってしまいますし、通常の私募ファンドの場合でも経理を間違えるAMなんてあり得ません。
まとめ
不動産と金融をつなぐ架け橋として、契約通りにきっちりと運用すること。
そのためにAM会社ではチームを組んで万全を期しています。
(それでも開示資料の誤字修正リリースなんてよくありますけどね・・・)
上場REITのアセットマネジメントは普通のAM会社と異なる点が3点あります。
1つはスポンサー会社の存在です。
元々スポンサー会社ありきでのREITであり、物件取得はスポンサーからの供給が全てという会社も多いです。その場合には、取得担当であるアクイジションは実質不要となります。取得やPOのための手続きが煩雑なのでその手続き業務は必要でしょうが、期中管理と兼務している場合も多いかと思います。
もう1つは、1度買ったらあまり売却しないという点で通常のファンドと大きく異なります。
不動産価格の上昇期であれば売却益を出すことも戦略の一つであり定期的に売却しているREITもありますし、現在の選定基準から外れるような物件を売却する場合もあるでしょうが、現時点でも、多くのREITは規模拡大を目指していることから、売却する動機があまりありません。
また、私募ファンドですと、そもそも借り入れの返済時期に合わせて初めから5年以内の売却を目指していたり、AMフィーも売却時には取得時からの上振れ分の半分を持って行くような契約をしていることすらありますが、REITでは売却手数料の1%だけというところが多いため、AMが無理に売却しようという動機も生まれません。
最後に、IR( Investor Relations)の重要性です。
まさに上場しているからなんですが、投資家に向けてそのREITの良さを延々と説明し、アピールしています。
個人投資家向け及び機関投資家向け説明会の他にも、機関投資家の保有比率が高いことから機関投資家を個別に回って説明したり、海外投資家に向けて海外に足を運んだりと結構アクティブです。半年毎に作成する開示資料も多く、多くのREITは資料を英訳して開示しています。
私募ファンド向けのAMも投資家対応がある意味最重要とはいえ、主にスポンサーからしか物件を取得せず、管理もスポンサー関連会社に任せているREITの場合には、不動産関連業務が少ないという意味で、特にIRの業務比率が高くなってきます。
以上、REITのAM会社は普通のAM会社と比べるとかなり異なっています。
宅建業免許を持つだけで無く、金融商品取引業登録も受ける金融業者であるという点がかなり重要なところで、金融業者として規制を受けており、金融庁からあれこれ厳しいことを言われるため、不動産業者らしい雑さがありません。
そういう点では、大雑把な不動産屋よりは、銀行出身の人の方が馴染みやすいかもしれません。
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